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reserach review 名城大学情報工学部研究報告

Vol.12023年3月発行

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特集

情報工学部のこれまでとこれから

佐川 雄二
佐川 雄二

情報工学部は、理工学部情報工学科を改組して、2022年4月に設置された、名城大学における10番目の学部である。

情報工学部設置の経緯

組織設置入学定員教員数特徴
理工学部・情報科学科2000年4月100名15名数理科学コードと情報工学コース
理工学部・情報工学科2004年4月140名
(後に145名)
15名
(後に19名)
ハードウェアセンスを持ったソフトウェア技術者の育成
情報工学部・情報工学科2022年4月180名19名
(2024年に22名予定)
技術力・実践力・協働力を備えた情報技術者の育成
理工学部・情報科学科

情報工学部の前身である理工学部情報工学科は同学部情報科学科を改組して生まれたものであり、この情報科学科が名城大学におけるはじめての情報分野を専門に扱う組織に位置づけられる。それまでにも、都市情報学部や理工学部の数学科及び電気電子工学科の一部で情報関連分野の教育・研究が行われていたが、2000年4月に理工学部改組(6学科から9学科へ)に伴い情報科学科が設置された。

情報科学科は、その名称の通り「工学」だけでなくより広い「科学」を指向したものであり、「数理科学コース」と「情報工学コース」という2つのコースを設け幅広い教育・研究を行っていたが、取得学位などいくつかの制度上の問題点があった。これらを解消するにあたり、実際には7割以上の学生が情報工学コースを希望していたことから、情報工学コースを「情報工学科」に改組することになり、2004年4月に設置された。

理工学部・情報工学科

情報工学科は、設立の経緯や東海地区がモノづくりの拠点であることを強く意識し、「ハードウェア(アナログ)的なセンスも合わせ持ったソフトウェア技術者」の育成を目標に掲げ、教育・研究を行った。その狙いは功を奏し、研究面でも多くの成果を挙げ、教育面でも多くの優秀な卒業生を送り出していたが、後述するように情報技術に対する社会のニーズがますます大きくなり、より実践的な技術者が求められるようになると、特に教育面で更なる改善の余地が生まれてきた。これに対し、プログラム制の導入などを行ってきたが、より大胆な改革を狙いとして、対象分野はあくまで「情報工学」としたまま「学科」から「学部」へ改組することになり、情報工学部を設置した。

情報工学部の学び

次世代情報技術者に求められるチカラ

近未来の社会であるとされるSociety 5.0に向けて、現在あらゆる分野でデジタルトランスフォーメーション (DX) が急速に進展しており、2030 年には先端 IT 人材が 54.5 万人不足する という調査結果 [1] もある。しかし、問題は数の不足だけでなく、様々な分野でデジタル化を社会変革まで結びつけるためには、情報技術者と社会の関わりはより広く・深くならなければならない。つまり、様々な分野の人々と協働し(協働力)、最先端の情報技術を駆使して(技術力)、課題を確実に解決に導く(実践力)ために必要な能力が求められている。

課題解決型学習

上記3能力を身に着けるには、机上の学習だけでなく、実際に課題を解決する体験が不可欠である。その学びの一つが課題解決型学習 (Project-Based Learning, PBL) である。PBLを通して、インプットした知識をアウトプットする方法や他者と協働して具体的な課題を解く喜びを知ることができる(図1)。情報工学部では、PBLをカリキュラムに取り入れるのはもちろんであるが、課題が現実の問題に近くなればなるほど、開発に必要なツールもより実際の現場に近いものが必要になるし、チームで協働する方法やアイデアを形にする方法も知っておく必要がある。情報工学部では、このような知識・スキルを身に着けるための科目等を新たに導入している。

図1
図1
体験的な学びと体系的な学びの融合

従来PBLのような体験を通した学び(体験的な学び)を導入するには、必要な知識を身に着けた後でないとできないため、多くの学生がPBLを行う前に学習に対する意欲を失ってしまうといった問題があった。しかし、開発ツール等の進展により様々な機能がモジュール化(ブラックボックス化)されたため、機能さえ把握していれば仕組みはわからなくてもシステムを構築することが可能となった。これにより、早い段階で体験的な学びを導入することができるだけでなく、それによって興味を持った学生が「これはどういう仕組みなんだろう?」とさかのぼって学習を進めることも考えられるようになった(図2)。これはこれまでの積み上げ式の学習(体系的な学び)とは逆方向の学び方であり、情報工学部ではその2つをうまく融合することでより効果的な学びを実現しようとしている(図3)。

図2
図2
図3
図3
自分の学びは自分で設計する

体験的な学びと体系的な学びは、学生によって好みや向き不向きが異なるので、その比率の異なるカリキュラムを2つのコース(総合コース、先進プロジェクトコース)として用意した(図4)。これを従来から情報工学科で導入しているプログラム制(重点的に学ぶ分野を44分野から選択する)と組み合わせることによって、学生が将来の目標や自分に合ったスタイルの学びを組み立てることが可能である(図5)。プログラムは複数選択することができるので、可能な組み合わせは30通りあり、細かい科目の選択も合わせると可能性は幅広い。

図4
図4
図5
図5
プログラミング実績評価入試

総合型選抜入学試験の一つとして、プログラミングコンテストやハッカソンなどへの参加経験者やアプリ等の開発経験者を対象として、実績とプレゼンテーション等に基づいて評価する入試制度を導入している(図6)。その目的は、プログラミングのスキルももちろんだが、情報技術により強い興味と意欲を持つ学生であれば、体験的な学びの効果がより強く発揮され、効果的な学びを与えることができると考えるからである。

図6
図6

情報工学部の研究

情報工学科では既にこの分野の主要かつ最先端の研究をカバーしており、情報工学部でも引き続き活発な研究活動が見込めるが、様々な分野との協働が改組の目的の一つでもあるので、今後は学内外の様々な領域との共同研究が進み、当研究報告書にも多様な用語が飛び交って「これは何学部の研究報告なのだろう?」となったら、それはそれで面白い。

[1] 経済産業省委託調査「IT 人材需給に関する調査報告書(みずほ情報総研株式会社)」(2019 年3月 )

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